北海道炭鉱研究会 羽幌炭鉱支部

朔北のヤマ 羽幌炭鉱

築炭ニュース 第26号(昭和26年10月15日)1面①

発行所

北海道天塩国苫前郡羽幌町築別御料上流(電話羽幌15番) 羽幌炭礦鉄道株式会社

編集兼発行人

齋藤隆夫

印刷人

金子長次

『炭山のオアシス なんとかならぬか 会舘新築希望たかまる』

炭礦での会舘〔築炭会館〕は砂漠のオアシスに等しい。乾燥し切つた砂の上を何十日も続けて旅をする人々、駱駝の背で炎熱にやかれ乍ら喉も乾き切つた旅人にとつて唯一の緑地。冷い泉と蔭は無上の憩いであるときく。

炭山の会館は従業員とその家族の只一つのオアシスであるだろう。しかし現状は果してオアシスであろうか。明日の労働意欲をたくわえる慰安の場所となつているだろうか

<写真>-おそまつな現在の会舘-

 

『現在の会舘〔築炭会館〕では映画は月四回まで 保健所の勧告』

現在の会舘は当初屋内体育場として建設されたもので最近のように映画娯楽に利用されるように当然興行場法、建築基準法の適用を受けることとなる。

そこで現建物を可能な範囲で基準に適合するよう手入しているがその限度に達して現施設では如何とも出来ずしかも築炭住民にとつてはこの会舘だけが唯一の娯楽場であるだけに会舘新築の要望は最近とみに強くなつてきた。

これに関して保健所の意向は左の通りである。

 

『保健所の勧告』

福利厚生施設として唯一の娯楽場である会舘はその用途も広く、特に映画、演劇等を一ケ月相当日数行われる筈で、そうなれが所謂興行場として許可を受けなければ反覆継続することが出来ない。

即ち法としての解釈は既存建物に於て一ケ月五日以内の期間であれば毎月反覆して興行場を経営してもその建物は興行場としての許可を要しないが、一ケ月五日以上であるときは、その月一ケ月だけでもその建物は臨時興行場としての許可が必要である。しかし毎月この方法で継続する時は常設興行場となる。

従つて現在の施設では建築基準法に基いても又は興行場法の施設基準にも合致せず興行場としては許可にならないので常設興行場としての企画に適した新築の計画を至急実現されるよう特に配慮願いたい。

 

『会舘新築計画の経過』

築炭会舘の建設計画は昭和二十三年から始まる。

当時炭礦住宅建設と相俟つて会舘の新築が計画され、その資金として炭住資金の融資を政府に申請したが、この資金を目当てに総坪数三〇〇坪、二階建、一〇〇〇人収容の留萌地方随一の劇場が生まれ出る筈であつた。(凸版写真は当時の設計図)

ところが申請した炭住資金の枠が削除されたため当時社宅不足で困つている従業員が多かつたので社宅の建設戸数を減すわけには行かず、残念乍ら会舘三百坪が削られて翌年廻しとなつたわけである。

さて廿四年にこそ建設の実現を期すべく接衝を重ねたが政府の融資の枠がつまり従つて炭住資金も最小限度に圧縮され、一切の不急施設は後廻しという情勢となり、あまつさえ石炭販売の統制方式も改正され所謂石炭業の自由競争時代となつてきた。

そのため中小礦は生か死かの土壇場となり健全な自立対策を講じる必要に迫られ福利施設面は一時お預けとなつて現在に至つたものである。