北海道炭鉱研究会 羽幌炭鉱支部

朔北のヤマ 羽幌炭鉱

築炭ニュース 第28号(昭和26年12月15日)3面①

『機関車の上は暖くないですよ 終車の汽笛をきくまで眠れぬ 機関庫』

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積雪が日増に増していく今日この頃築炭鉄道機関庫では半歳の休養をとつていたラツセル車を引き出しその整備に忙がしい。

庫内勤務の越澤さんは「開礦当時は現在のラツセル車もありませんでしたので機関車を三台連結して除雪に当つたこともありましたが毎年雪には悩まされています。」

「雪と云えば思い出しますが昨年の大晦日は大変な吹雪で列車も運休をよぎなくされ、困つたことには羽幌方面から出稼ぎに来ていた人達でした。兎に角時期が時期でしたので『家でゆつくりお正月を迎えよう』と楽しみにしていた人達だけにその迷惑も甚しかつたことゝ思います。」と機関手の鈴木さんは気毒そうだつた。

「苦労は沢山ありますが…そうですね。時々人から-機関車に乗車しているととても暖かいでしよう-なんて云われることがありますが、本当に乗務した人でないと分りませんが暖まるどころか寒くて閉口しますよ。水滴でふんどしまでずぶ濡れになり釜前でさえも軍手がしばれる程ですから御想像にまかせます。定時運転、無事故をモツトーとしている吾々は濡れた衣類も着替えるいとまもなく直ぐ又整備作業などにかゝらねばならない時もこれからの時期には多いことでしよう。それから吾々が何時も『発車前になつて機関車が車庫から出て来ないがどうしたのか』と質問されるのですが到着した列車は次の発車迄に水の補給、石炭投積、火床整備注油などの点検整備が行われているのですから非常に苦労しているわけです。この点理解して戴きたいと思います。定時の勤めが終り帰宅して来ましても終車の汽笛が聞えるまでは本当にくつろげないということも医師が重患をきづかう気持と同様だと思います。」と安藤助役は語つていた。

検車係の深町さんも「今年は暖冬異変とでも云いましょうか、例年に比べて割合に暖かですし雪も少いので大変助かりますが、兎に角冬期は我々の苦痛のたねが多く皆も苦労をします。」たゆまぬ石炭輸送の努力と労苦がこゝでもしのばれ『共に働き共に生きよう』の職場モツトーにふさわしく健斗が続けられている。

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『通話はなるべく短く-そして終話信号を 女護ケ島 交換室』

数多い職場の中でもおそらく『女だけの職場』は交換台だけであろう。云わば紅一色と云うところだが、勤務は他の現場と同様に楽でもなさそうだ。そこで記者は交換嬢に敬意を表そうと、せわしそうにプラグを操作する音、発電信号機の摩擦音などさまざまな交響楽ならぬ狂騒音の中に交換台を訪れた。

「丁度今時分は時間的に少し楽になつて来たところですが、朝八時から十時頃までとお昼の二時から四時頃まではとても混みます。」とヂエスチュアーと共に説明して呉れた。「交換台でのお勤めは大変神経を使う仕事なので疲労もしますし身体にも悪いと思いますのでお休みの時間はみなさんとピンポンなどして身体をこなします。」と水戸さんは語つていた。

「これは私達からのお願いですけれど冬季期間は自然と電話の利用度も多くなつて来ますので混み合い支障をきたすこともありますので用件は簡単に要領よく済まして戴きたいと思います。時折夜間に長時間に亘り電話をかけられる方もあり、しばしば他に迷惑をかけお小言も戴きますが、私達の未熟はつとめて研究し改めていきたいと思いますので皆さん方もよく理解し協力を頂ければスムースに運ぶことが出来ると思います。それから御面倒でも終話信号をお忘れなく。」と。

こんな談話を交している中にも間断なくプラグの操作は続けられている。十一組のプラグコートが皆の手となり足となつて結ばれているのだ。思うに電話というものは兎角便利なものである。