北海道炭鉱研究会 羽幌炭鉱支部

朔北のヤマ 羽幌炭鉱

築炭ニュース 第26号(昭和26年10月15日)2面①

『これが会舘の実態 一般の意見をきく』

会舘〔築炭会館〕についての一般の輿論は現在の会舘では従業員とその家族が増えた現状では狭く、しかも設備が不完全なので少し位改造してもどうにもならない。板の間にぎつしり座つているので身動きも出来ず、一朝事故でも起きようものなら大変なことになる。天にも地にもこの築炭には会館で映画をみる位が唯一最大の慰安であるから是非とも完備された会舘がほしい-これが山全体の熱烈な希望であり、しかも福利厚生部面のゆるがせに出来ない問題として登場してきた。

会舘となれば建築基準法や興行場法の規定から簡易な構造の木造建物では今後許可されない。また山としてもどうせ新築するなら完備された永続性のある立派なものでなければならないだろうから、その建設費は二千万円は下るまいと見られる。

そこで会社も早急に具体化することは容易でない筈だろうから当然従業員の何等かの協力が必要だろうとの意見が大分に出てきているようである。

<写真>身動きも出来ずに映画をみる人々!

<写真>あゝ面白かつた! その後が大変だ。御持参の敷物をもつて-傘が間違えたよ。寝てしまつた弟をおんぶして。こゝから靴をはきたいけど会舘のおぢさんにおこられるからそれも出来ない-ハネた後には紙くづや喰かす、土くれが毎回ドラム缶で一杯も残つている。

『職組枷場氏の意見 汗の奉仕で殿堂を築こう-』

太陽の慈光から隔離された地下数百尺の坑内から一日の労働を終えて帰宅しひと風呂浴びて夕餉の銚子を傾けることも私達の憩でしよう。しかしながら夕食後一家たづさえて映画の観覧をたのしむのもまた格別です。

果して現状の会舘は私達を充分に楽しませて呉れているでしようか。場内の設備舞台装置はまだまだ不備不完全です。スピーカーから流れ出る美しいメロデー、やがてベルが開幕を伝える、次々に消えていく場内の照明は次第にスクリーンの映画に吸い込まれて椅子にもたれながら真にたのしむ夢のような慰安の一とき。これは現在の築炭にはほど遠い夢の殿堂でしようか。その夢は今着々と現実化されているのです。われわれの真に慰安を求めようとする意慾と汗の奉仕がこの夢を具体化させて呉れることゝ思います。

『労組委員長の意見 願望のまとである会舘を!』

炭礦住民の切実なるのぞみであつた上水道施設も着工せられまた主要運搬坑道の実現に明るい見通しを身近かに接する私達はこれら夢とばかり思い込んでいた難事業が現実化されつゝあるをみまして本当に心の温るのを覚えます。そこで身近かなものにもう一つ取り残された夢ならぬ慰安の殿堂のあることを忘れられない。

会舘の現状はあまりにも貧弱である。これを改築しなければならぬとは私だけの思いではなく少くも会舘で慰安を求めるすべての人の望みだと思います。この慰安により明日への力を養ふ多くの人の願いでもあると思います。

この慰安により明日への力を養ふ多くの人の願いでもあると思います。この願望を唯いたづらに放置してはいけないのです。そこでこの切実なる願望を具体化さすべく努めねばならないと思います。これは決して淡い夢ではないお互いの意気と奉仕が夢を実現へとみちびいて呉れるのではないでしようか。私は皆さんの意のある気持に訴えたい。熟慮をお願い致します。

『みどり会の意見 夢ならぬ憩の家を! 磯野彌生さん談』

会舘の現状につきまして日頃感じていることや希望を二、三申し上げさせて戴きたいと思います。

只今の会舘では無理からぬことゝは存じますが、入場の際各自の履物の不始末から種々の煩雑を眼にし、まゝ不快を感ずることがあります。下駄履きでも這入れることが出来たならば……。それに雨天などは殊に雨具の持込みやらで混雑をまぬがれ得ないことは遺憾に堪えません。また座席の改善要すれば椅子になれば結構に思います。私が特に切実に感じますのは非常口の不備不完全なところです。各地で再三繰返される火災事故を想います時その必要性を痛感させられます。

過日羽幌二坑に出張しました主人の話に依れば、二坑では羨やましいほどの会舘が皆様の努力と奉仕で建てられましたとか、決して真似るわけではありませんが私達の心意気と奉仕如何では近い将来夢ならぬ憩の家を建てられるのではないでしようか。